碧空3596 nautilus1939(魂の交換のアイデア)
3596 nautilus1939(魂の交換のアイデア)
山幸彦が海幸彦の主張する本の鉤を意図的ではないかのように紛失するのは、海幸彦を葬る陰謀を知らず知らず白状するかのようで、山幸彦が本の鉤はコノ通リココニと主張しても、それは本の魂の回復ということにはならない。というのも、本当にアノ、アノ時ノ本の鉤であるかどうかをどうやって海幸彦は知るのだろうか。本の魂はもう戻らない。迂闊にも魂を交換したことは、海幸彦が自ら本の魂を取り返しのつかない海底に沈めたも同然なのであるし、そもそも、本の魂などというものが疑わしいのである。それは、真にも偽にも不足する。
さらには、魂の交換が、山幸彦のアイデアなのかどうかも疑わしい。このアイデアは、一体どこから来るのか。
海幸彦と山幸彦の関係は魔法使いと弟子(長靴を穿いた猫)の関係で、鼠に変身した魔法使いを長靴を穿いた猫が嚥下する瞬間に魔法使いが長靴を穿いた猫となって躍り出るように、山幸彦が海幸彦を呑み込んだ瞬間、山幸彦は海幸彦に乗っ取られる。
これは、種と個の関係であるし、嘘つきと「私」の関係である。嘘つきを尋ねれば「私」に出る。嘘つきとは何か、「私」である。これは「私」が嘘つきの魂のようで奇異であるが、嘘つきが「私」の魂であるように魂を交換して、「私」は嘘つきである、と反転するのは、「私」が嘘つきを呑み込んだ瞬間に「私」は嘘つきに乗っ取られるのである。
こうして、種と個の関係すなわち媒体性は、陰謀の気配となって迫る。J.J.Rousseauを包囲する陰謀の気配は、この自然である。


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