碧空3630 nautilus1973(貞子とOctopus)
3630 nautilus1973(貞子とOctopus)
「リング」(中田秀夫)の、あの貞子が、八ミリフィルムに写し取られた古い井戸の二次元画像から次元跳躍して、古井戸と通底したテレビの奥からひっそり乗り出して来る受肉のホラーは、古井戸の底闇に閉じ込められた狼狽や恐怖を他の誰かの肉体に転写する呪術的装置をビデオや電話といった器官の延長に忍び込ませ、誰にも声の届かない暗い井戸の底で雌雄同体になっていく一週間の長い長い執行猶予をビデオをのぞき見た者に魔術的に移転して逃がさない。魘されるように何処へ遁走を試みてもただ期限が縮まって、隠れなさが濃厚になっていくだけである。
この呪いは、「私」の秘密を他の誰かのことにする告解の、その魔術的転移の如くである。「私」を襲う雌雄同体を他の誰かのことにして雌雄異体の気配と空腹を、世界を回復したいのである。誰も見つけに来ない海底で熱平衡を擬装するOctopus が惧れるのも雌雄同体になっていくことであるが、熱平衡の練習は輪郭喪失の擬装であって、その効果は輪郭の励起である。
貞子の顔を(あるいは、顔がないのを)覆い隠して垂れる、垂れるだけでなくなおも伸びる長い髪は、雌雄同体になっていく逃げ場のなさに抗って伸びるのである。つまり、それは、一体の種の如くのたうつ蚯蚓を打ち消すまでにコピーする憧憬であるが、恐怖との区別がおかされた複雑な輪郭喪失の擬装発作なのである。


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