碧空3651 nautilus1994(地下室症と疾しさ)
3651 nautilus1994(地下室症と疾しさ)
「それはアンスル・ボルンという30歳の巡回牧師で、ある日(1887年1月17日)彼は銀行から551ドルの預金をおろし、突然グリーンから失踪、2ヶ月の間行方不明であった。この間彼はA.J.Brownと名乗ってペンシルベニアのノーリスタウンで小さな雑貨店を切りまわし、仕入れ万端を立派にやっていた。しかもこうした仕事はそれまでに一度もやったことがなかった。1887年3月14日、彼は突然
覚醒して家に戻ったが、その間のことは完全に忘れていた」fugue (夢中遊行的失踪)
海底で輪郭喪失に没頭するOctopus の如くアンスル・ボルンの日々を窃視するA.J.Brown を誰も見つけに来ないので、地下室症に冒されたA.J.Brown が地下潜き凌ぎ息衝き余って地表に出るのにペンシルベニアのノーリスタウンまでの距離がかかったとでもいうようだ。その間に記憶喪失に冒されるが、巡回牧師アンスル・ボルンは消失するのではなく、疾しさとなって潜伏するのである。
この潜伏の解除が、この夢中遊行的失踪からの覚醒であるが、疾しさは記憶喪失となって転写される。凡そこの世に棲む日々は疾しさに冒されていて、地下室を誰かが嗅ぎつけた異常接近の気配は、その疾しさの発症なのである。


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