碧空3655 nautilus1998(もう一つの異界訪問譚)
3655 nautilus1998(もう一つの異界訪問譚)
「それはアンスル・ボルンという30歳の巡回牧師で、ある日(1887年1月17日)彼は銀行から551ドルの預金をおろし、突然グリーンから失踪、2ヶ月の間行方不明であった。この間彼はA.J.Brownと名乗ってペンシルベニアのノーリスタウンで小さな雑貨店を切りまわし、仕入れ万端を立派にやっていた。しかもこうした仕事はそれまでに一度もやったことがなかった。1887年3月14日、彼は突然
覚醒して家に戻ったが、その間のことは完全に忘れていた」fugue (夢中遊行的失踪)
雑貨商A.J.Brown に身を窶して浦島の如く異界を訪問する突然の孤独は、巡回牧師アンスル・ボルンを覆うメランコリーを打ち消すまでにコピーする憧憬であるから、その輪郭の励起は逃避ではなくmetamorphosis であるし、罰なのか救済なのか、あいはもっと何か、被造物がヤーウェを尋ねるような反省癖の、その躁状態である。
メランコリーは疾しさとなって潜伏して、記憶喪失するまでに追い詰められている。この記憶喪失からの突然の覚醒は、孤独の回復ではまるでなく、巡回牧師を冒すメランコリーの方へ大きく振れたのである。その大振れが大地震の如く突然と感じられ、シャムの双子の如き巡回牧師と雑貨商の、その、顔を合わせたことにならない擦れ違うような、「私」のことが他の誰かのことになる魔術的隣接は山岳を隔てている。


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