碧空3661 nautilus2004(どろ狐八十七体の遊女分身の謎掛け)
3661 nautilus2004(どろ狐八十七体の遊女分身の謎掛け)
室津の遊女は八十七人、酒造りの商人和泉清左衛門の男子清十郎は美形(ひぎょう)にして、十四の秋には色道に身をなし、一体のどろ狐が八十七体の遊女に分身して、さらには切った髪や爪となって取り憑かんばかりである。(井原西鶴)
これは、遭遇した二体の蛞蝓の如く、八十七体に分身した雌雄同体のどろ狐と精子を交換する二重交接である。どろ狐と美形の清十郎とが二重に受精して、何か盗まれている!気配に(世界が広がり世界が閉じる「恋は闇夜を昼の国」に)狐に化かされたように迫るのである。
どろ狐八十七体の遊女分身は、半人半獣のSphinxの断崖の如く、八十七体の間を彷徨う美形清十郎に、世界が広がり世界が閉じる、その逃げ場のなさを謎掛けるのであって、清十郎の隠れなさは、誰一人として知らぬもののいないといった誇張なのではない。清十郎は単なる偶然の美形(ひぎょう)、偶然の変異、偶然の好色ではないのである。
清十郎の好色は蛞蝓の如く太平で、その彷徨がカインの如く極度のスロー・モーションであるのは、いくら先へ急いでも世界が終わっているからである。


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