碧空3161 nautilus1504(内臓の外蔵、外蔵の転移)
3161 nautilus1504(内臓の外蔵、外蔵の転移)
山中俄かに聞こえて来る音が旅人を驚かせる瀧にしても、煙の立ち昇る柳生の里や隠沼に卒然と出てしまう四百年の跳躍あるいは落下にしても、あの日、彷徨い込んだインデアンが森林の奥深く初めて目の当たりにしたナイアガラの華厳にしても、みぎわに椀が漂い流れ来るのを見て川上に誰かが棲むのを知る遡上の心臓の高鳴りにしても、その、場所の場所の浮上は、例えばそれが龍に呼び出されたと感じるのは鏡をのぞき込んで無意識を呼び出す如く、呼び出された鏡像なのである。
八岐大蛇は、そうした、呼び出された鏡像であるが、この異常接近は個と種が解離しないで光り出すのである。それは、本当の持ち主の異常接近と感じられ、草薙の剣は、本当の持ち主だと分かるや発光して姿を現わすのである。
草薙の剣はスサノヲの内臓を代表して、八岐大蛇が内蔵して守護するような外蔵である。スサノヲの彷徨は暗闇を曲折するようでいて、まっしぐらに、この外蔵へ向かう。Issac MaCaslin少年の内臓がOLD BEN(「熊」W.Faulkner )となって姿を現わすために、湿地に足跡を残し、滲み出る水に足跡が崩れて途絶えたと思うとまたどこからともなく生まれてなおもずっと、それ自体を後れて辿るというように足跡が続く如く。
Jean Genetがポーランドとチェコスロバキアの国境のライ麦畑に起こった「貴婦人と一角獣」を脱け出して、パリの、誰もいない部屋の、破れた硝子窓に張られて黄色く褪色した新聞紙が囁くように風を孕んで震えているのは、その、本当の持ち主が誰だか分かったのである。その振顫は、異常接近が惹起する発光と区別がつかない。つまり、その震えは、光速に達している。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home