碧空3253 nautilus1596(フランス女を神秘的にする魔術的構図)
3253 nautilus1596(フランス女を神秘的にする魔術的構図)
演劇は、「私」のことを他の誰かのことにする告解の如き魔術的転移や、メランコリーが躁状態になるような魔術的変脱を、可視的な葛藤に配置して異様にする(劇化する)のである。異様に見えるのは、転移や変脱に潜む欺瞞や憧憬といった絡繰りの精である。
階段を降りて来るヌードは、下の方から首まで他の誰かが上がって来る気配を打ち消すまでにコピーする憧憬である。♀のコブラが♂のコブラを呑み込み終わって♂のコブラになるといった目に見えない葛藤を分割して、その片割れが可視的になった、階段を降りて来るヌードは夢遊病の如く異様である。
ゴダールの「神秘的なフランス女」がインタビューに応答して唇をせわしなく歪め、気取った鼻音を交えて喋りまくっている、その部屋の奥には窓が見え、それは計算された構図なのか、ガラス窓の外、それはパリなのか、偶然の、というよりまるで別次元の通行人が窓枠から押し入らんばかりに、というより窓枠があることを知らないかのように迫って、このフランス女はその異常接近を知らないままカメラに向かって喋りまくっていて、窓辺を通りかかった人は計算し尽くされたエキストラなのか、あっと言う間に掻き消え、パリの南方に地中海を暗示し、さらには中東、そのさらに奥にはベトナム、顳に拳銃を突きつけられた小柄なベトナム人があっと言う間もなく崩れ落ちる一隅!
「私」のことが他の誰かのことになる位置異常(場所の場所の浮上)は、この、どうということのない平凡なフランス女を神秘的にする魔術的構図である。


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