碧空1007 瞬間移動の、盗まれた解
1007 瞬間移動の、盗まれた解
家族写真の「無意識」は雌雄同体の気配や個虫が部分の振りをする衝動、Hansが屋根裏部屋でもう一人のHansを発見する秘密(F.Kafka )や、もう一体分の組織や器官を孕んだ奇形嚢腫や弥勒の喉仏が、盗まれた解であるような献身、その、他の誰かとなって想起する奇妙な記憶の、その、漠とした不在である。
この、漠とした不在の冒険の盗まれた解が、水底に沈んだ都が百年にひとたび姿をあらわすような瞬間移動の、あの、ガンに跨がったニルスの冒険であり、1905年といえば日露戦争や泉鏡花の頃の、スイカズラが匂いモノマネ鳥が鳴いて(思イガケナイ景色ニ和蘭陀ヘ流レルように)アメリカ南部で起こった「自動車泥棒」(W.Faulkner)の、その、記憶を試されているように他の誰かとなって想起する瞬間移動(の光の急襲)に被曝する11歳の清教徒の末裔の、ペニスの冒険なのである。
道成寺の雌雄同体の大蛇の受胎には、どこまでも追跡されどこまでも遁走する若僧のペニスが自切して残されていて大蛇の瞋恚の炎となって祟るように、ニルスの冒険では一寸法師の振りをする鏡像が盗まれていて、ペニス(本当の名はラテン語のルクス(光)に由来するルーシャス)の冒険では一寸法師の振りをするペニスが自切して行方知れずになっていて祟るのである。
この冒険は、漠とした不在を解いて帰郷しても何も変わってはいない、その、遠近法に包まれて外延的に広がる現在の、その、雌雄異体の気配を遡上する。ニルスもルーシャスも子どもなのに、自食的に若返るのである。


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