Wednesday, June 28, 2017

碧空1038 種の夢の暴発

1038 種の夢の暴発  場所や意味が揮発して無も同然の「和蘭陀」は、しかも場所の覚醒、意味の覚醒であるが極端に私的な覚醒で、しかも隠れない。現在が閉じる瞬間移動の、その隠れなさは(奇怪にも)種の夢の閉塞なのに鬱勃としている。「私」というものは疑わしく世界の表情は絶望の貌なのに、鬱然と覚醒している。場所がかかる瞬間移動は極端に秘密なのぞき穴であるが、そのズーム・アップはそのままにのぞき穴の爆発的な拡張なのである。世界の暴発、膨張は、もの凄い最短距離で井戸の底へスッと落ちていくようなズーム・アップからの擬似脱皮である。  雌雄異体の双子は、こうした擬似脱皮(ヒステリア)のもう一つの隠喩である。女装のヨハンは雌雄異体の双子を内蔵することになるが、漠として何かを劇化している。それは何か。(「Monster」浦山直樹)  雌雄異体の双子のどちらかを差し出すように迫られたとき母体は、遠近法の効果からは、雌雄どちらかを反母性的に選択したかに見えるが、実は選択したのは遠近法の揮発したおぞましい世界の表情の覚醒なのである。この覚醒は不随意であるから、それが母体の選択に見えるのも遠近法の効果である。こうした混乱を、持ち主のいない母体が持ち主のいない世界の表情を選択する(怪談も同然の)種の夢の暴発を、微細なミステリを、解くというよりは漠として拡大せずにはいられないのである。そこでは、ヨハンに話して聞かせるアンナのおぞましい記憶はヨハンの記憶が抽象を解いて(しかも)アンナの声帯を通してやって来て、擬似過去の、おぞましい景色を共にする。この擬似過去は、一般化や提喩の猛威なのではなく、種の夢の暴発である。  ゴーストのかかったヨハンを法則的、歴史的に把握し、銃弾で展翅することはできない。ベッドに眠ったまま目を覚まさないヨハンとは別に、ベッドを脱け出してしまっているヨハンの存在を「Monster 」の最後シーンは暗示しているが、それは変に光っているし、鬱然と覚醒している。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home