碧空1102 MOON WALK20(ヨセフは疑わなかったのか)
1102 MOON WALK20(ヨセフは疑わなかったのか)
ヨセフは疑わなかったのか。マリアを襲った突然変異を。
ルーカス・ビーチャム(碧空1099 MOON WALK17)は、まるでレーテの河を渡ったかのように、とり返しのつかない変化に妻モリーと共に襲われる。洪水を死にもの狂いで潜り抜けて戻った日からというもの、乳飲み子を抱えたモリーがザック・エドモンズの妻が産褥で死んだために思いがけなくもう一人の赤ちゃんにも乳房をくわえさせることになって半年も帰ってこなかったのである。
ルーカスはその、耐え難い半年もの間、煖炉の火を絶やさず、家の屋根からは青い煙が憤怒を秘めて立ち昇り続けた。とり返しのつかない変化が埋め合わせる憤怒が、世界が終る寸前で何かのつづきのように続いたのである。
鉄板写真じみた老ルーカスが発作的な埋め金探しに探知機を駆使し始めて「神の小さな土地」が移動していくおかしな景色に、憤怒を秘めて(しかし眠気のように)立ち昇り続けたあの青い煙が写し出されているのを、老モリーは(重力に屈したのではなく反抗するというのでもなく重さも大きさもなく幾重にも重ね着していることで、さらには鉄板写真のように誰よりも生き延びることで辛うじて輪郭を保存した老モリーは)憂い見つめないではいない。
ヨセフは疑わなかったのか、という不滅の問を、というより次ニ何ヲシタライイノカ分カラナイ憂愁こそを老いて復習するといったように、過ぎ去っていない現在が喉元まで上り詰めて来るだけでなく現在に闖入するために姿を変えて告白しているのが、老モリーには分かるからである。


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