Sunday, May 06, 2018

碧空1246 MOON WALK164(Sherlock Holmesの冒険)

1246 MOON WALK164(Sherlock Holmesの冒険)  Sherlock Holmes の冒険は、蒼然として遺跡じみた城館の薄気味悪い奥行に分け入っていくゴシックの気配がミステリの気配に転写されて、タイム・スリップや既視感といった擬似過去が万人に通用する予定調和的な過去に変質する危険を冒す。  ハンスがもう一人のハンスを発見する屋根裏部屋で気配づく水音が「アメリカ」の地表に出てKarlの失踪が客観に転写されるのとは逆に、東インドやアメリカ、オーストラリアや南アフリカに発する伏流がヴィクトリア王朝期の英国デヴォンシャーや西サセックスの、とっくに崩れてもいいのに崩壊をこらえていて(過冷却現象のように)何かほんのちょつとした刺激で一気に全面崩壊が音もなく起こりそうなゴシックの奥地に出て霧を深める、そうした気配から藻掻き出るようにミステリの解明の試みは遡上する。  しかしそれは、通り魔や鎌鼬や雪女の如く例外的に降りかかって極端に私的でまぼろしじみた断片から演繹の体系が藻掻き出ようとし、その、ついに暴かれない体系からは隠れない断片が藻掻き出ようとする葛藤なのである。この葛藤は、復活の気配が、その大気が、意味か寂漠かの葛藤、その「私」と「今」が、のぞき穴を獲得して暴かれない世界の始まりか、のぞき穴を盗まれて隠れない世界の終わりかの葛藤である。  予定調和的な過去が通用すること、それが意味であるが、つまり、世界の始まりを現し出すために意味をこの世のものが鎧い、現在が気休めに広がるのであるが、その極端な拡張はいきなり擬似過去になる。寂漠とはこの世が宙に浮く擬似意味である。Sherlock Holmes の冒険とは、この、極端に私的な擬似意味を漠として躱せないために、次から次へと「事件が起こらずにはいられない!」(痕跡という痕跡を尋ね、意味を探さずにはいられない)焦燥なのである。

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