Wednesday, May 06, 2020

碧空1730 nautilus73(遁走は遁走を疑う)

1730 nautilus73(遁走は遁走を疑う)  EROSは暗騒音(「禁止と誘惑の図式」)であるが、後れて来るはずの主体が早く来過ぎて何か疾しいノイズ(焦燥や憂愁)に変質する。EROSの神格は二重の気分であるが、VOLCANUSの器官の延長としてのMARSの神格は霊感的な「海のゆれ動き」(起コリソウモナク何時モ満タサレナイ姦通!)である。  二重の気分は後れて来るはずの主体を脅かすから、狼狽から転移発作的に、誰カガイル!と漠として広がる大気は雌雄異体の気配だけでなく、何も身に覚えがないのに迫る追跡や陰謀の気配となって複写されもする。後れて来るはずなのに早く来過ぎてしまう主体には、それは不思議な焦燥である。それは、遍在するはずなのに盲が誰かの存在を手探るような「アブラハムや、何処にある」という声に呼び出されるとも取り消されるともつかない暗騒音の、その複写である。  「Fugitive」のシリーズの諸エピソードの表題は三枚一組の色違いの飛行船の切手「Zeppelin」のように魅惑するが、出発地点から既にして次の街で、前触れるエピソードの表題は逃亡の道標となって誘うだけでなく次のエピソードを孕んでいてフーガ(fugue )の如くである。どのエピソードも今日の片隅に縁生したエピソードに打ち消されて潜伏した諸エピソードの、夢のような(従ってエラーのような)思いがけない表出である。このエラーを残らず一気に打ち消さない限りは、本当のエピソードは覚醒しない。  それは、諸エピソードの和でも平均でも、代表でもなく、エピソードはふくらんで生長、展開するようでいて、自食、あるいはアメーバの如く分裂、あるいは珊瑚虫の如く全体が個虫の振りをして出芽するのである。その、誰もいない部屋を呑み込んだ鏡の如き次の街を、知らぬ間に出発地点に連れ戻されている次の街を、何度ものぞきに戻らないではいない。  この逃亡者は、何も身に覚えがないのに冤罪がばかばかしくも真に迫って来て、本当の犯人が覚醒するためには打ち消されて潜伏しているはずの、取り違えられた存在の、夢のような表出すなわちエラーであるが、後れて来るはずなのに早く来過ぎてしまう主体には、取り違えられる錯誤とは別に記憶喪失のような(あるいは何か落丁があるような)ノイズが、起コリソウモナク何時モ満タサレナイ遁走(fugue )!なのである。つまり、遁走を疑うのである。

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