Monday, December 24, 2012

碧痕259 独身者の遡上、窃視、禁止

259 独身者の遡上、窃視、禁止  新大陸を移動することに姿を変えた遡上(「あめりか物語」荷風)は、個体ではない或る女体を場所とする、大都会の野生の灯をズーム・アップして、方角を見失って立ちおどむ。その、野生の気配を消せない灯火や電飾は、太陽や慈母と区別がつかない。朝の光と蔽いかける大きな顔と名を呼ぶ声の最終状態であるからである。  老いていくことに姿を変えた遡上は、蒸し暑い「玉ノ井」の灯火をズーム・アップして、その入り組んだ溝や路地はさほど遠くはないしかし灯火の及ばない場末の闇に消え入る、というように次元を縮める。これは、アメリカへ渡って追い詰められた日本人が底厚い重い靴を引きずって「朦朧と影の如く狭霧に消え入る」というように狩り立てられた姿を闇に没しようとする境地から抜け出せないのである。  独身者が禁止するのは、闇に消え入ってしまう、その完了である。闇に消え入る練習としての次元の縮み(断面)は最終状態が生まれ変わるのに応じて、焦燥とも意志ともつかぬ何かを閉じ込めている。届かぬ思いこそは、独身者を駆り立てる胸騒ぎである。

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