Thursday, November 19, 2015

碧空652 the sense of some hidden microphone

652 the sense of some hidden microphone  スフィンクスが転落して荒野(媒質)となって姿を晦ますのは、Flower-Stoneの極小のフイギュアが盗聴器になるようなものである。それはただ盗聴するだけでなく、盗んだ思考をしゃべり出す声帯の延長、拡声器や伝声管でもある。  Flower-Stoneは何処かで立ちはだかるように問いかけて来たもう一座のスフィンクスと、ファウスト博士のように何か悪い黙契を交わしているはずである。この二人組が王位と引き換えにしたものは、上方への転落を現実にする影としての転落であるが、それこそがこの王位の現実性の出自である。  ありそうもない劇的な幸運を、こつこつと石を積み上げレンズを磨き上げみっちり数字を書き込む単調な反復の日常性と引き換えにしたのではない。ファウスト博士が真理を魂と引き換えにしたのではなく、悪魔との契約であるからには、虚構であることの気配を消した真理や魂を、それが虚構であることの気配の消えない黙示と思いがけなく引き換えにしたはずであるように、従ってこれは引き換えたことにはならないように(つまり、真理や魂がもはや真理や魂ではないように)思いがけない解と引き換えに潜伏したスフィンクス(予期)は、思いがけない幸運(解)の出自として解の媒質に転位してFlower-Stoneは漠とした被盗聴状態になる。  つまり、Nashe-Pozzi の被盗聴状態は、Flower-Stoneの被盗聴状態を共にする。Nashe-Pozzi の思いがけないモニュメントであるはずの高く積み上がった城壁に面して、Nashe が「世界が終わっている!」発作に襲われるのは、最終状態に転位したスフィンクスが大気を果てしなくして(跡形もなくして)息を洩らしているからである。(「The Music of Chance」P.Auster)

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