碧空964 盗まれた生
964 盗まれた生
盗まれた火の誘惑は、どこへ続くのか、どこへ繋がっているのか、という焦燥や漠とした予期である。それは地下の青い水脈かも知れないし、水音が屋根裏部屋でするのかも知れないし、地表に出て陸橋となって姿を現わしているのかも知れない。
バイロン・スノープスの場合は、盗まれた通貨を通して、獰猛な四匹の蛇に繋がっている。フレム・スノープスの場合は、それは、どこへ繋がっているのかというより、どこまで行けるのかどこまで化けられるのかジェファソンになれるのかという思いに変質している。
フレム・スノープスはSnopesを脱け出したはずなのにミシシッピの刑務所に送り込まれたスノープスは壁に写る「見てはならない影」であり、この後景は、世間体に着膨れしたフレム・スノープスがなおも「血縁の呼び声」に免疫でないということであり、規定である。
しかも、単に規定しかけるのではなくジェファソンに変装する。というのもフレム・スノープスの夢はジェファソンになることだが、ジェファソンはのぞき穴の向こう側(前景)ではなく、こちら側(前景の場所、媒質)だからである。全背景が前景の振りをするように、ジェファソンはフレム・スノープスの振りをする。
そのような変装を可能にする媒体が通貨である。言葉は盗まれようのない意味がまるで盗まれて機能するように、通貨は盗まれようのない価値がまるで盗まれて機能する。Snopesがジェファソンの振りをするのである。(スノープス三部作 W.Faulkner)


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