碧空1250 MOON WALK168(奇妙な慰藉)
1250 MOON WALK168(奇妙な慰藉)
クローンは決して個を救わない。個を襲う過冷却現象が客観に転写されるに過ぎない。この世ならぬ満開のソメイヨシノの続く春昼に浮かれる人々は、クローンの森に救われようとしているのではなく、個を襲う過冷却現象を通して部分が全体を代表する興奮が人々の数を自乗して殺到する、その膨れ上がった波に漠としてさらわれるのである。
この眩惑は個の危機である。津々浦々に猖獗した東京音頭の流行のように、個を襲う過冷却現象を自ら予感している過冷却状態だからである。ところが、誰に入れ替わったのか分からない、うわさとなって漂う「復活」の興奮や、一向一揆の「南無阿弥陀仏」の興奮が人々の数を自乗して殺到する如く、その眩惑は奇妙にも慰藉になる。


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