碧空1350 MOON WALK268(最内奥の邪悪に面して)
1350 MOON WALK268(最内奥の邪悪に面して)
天空から落ちて来た小石が蛙となって古池に跳び込む音は、沈黙も同然であるが、その沈黙には波紋が空耳のように広がっている。
清少納言の、喉元まで上り詰めて来ている期待が息衝く余り、ローレンツ博士のホシムクドリが部屋に一匹の虫もいないのに卒然と捕食の一連の動作を起こしたという真空反応のように、日暮れてからホトトギスのたどたどしい忍び音が空耳のように聞こえて来るのはゾクゾクする。ゴーストがかかるのは、忍び音が空気を震わせて伝わって来るのではなく真空となって超伝達して、霊的期待が潜伏しない、すなわち後れて来る主体にならないのである。ぞっとするように鳥肌が立つとすれば、それは、この世のことどもがふしぎにもいつでもゼロであるような最内奥の邪悪を模写するのである。
しかし、最内奥の邪悪を総身の毛も太るような戦慄を以て模写するのではなく、個の顔が戻らない顔面蒼白を以て模写し、その、個を踏み越えた面白さが(何か光るような種の関心が)鏡に映ったようにこの世のことどもを片っ端から転移修飾して回らずにはいられないのが、清少納言的なもの(何か光るように懐かしいゼロ)である。


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