碧空1746 nautilus89(五つの葛藤、5隠語、5神格)
1746 nautilus89(五つの葛藤、5隠語、5神格)
「モンスター」(浦沢直樹)が展開するために、ヨハンが瓜二つの偶然と運命に駆り立てられ、アンナは瓜二つの症状と無意識に導かれ、Drテンマが瓜二つの個と種(EROS)を扱い、連邦捜査官ルンゲは瓜二つの悪と良心を追跡する、というように分業する。
この分業と四つの葛藤がいつの間にか変脱することを暗示するように、「赤いバラの屋敷」を通り抜けたグリマーは、瓜二つの偽と精神を担って神出鬼没する。
つまり、「モンスター」は、運命譚と精神分析と魔法譚と幽霊譚とミステリが知らぬ間に変脱し、ヨハンが駆使する隠語が神託であるとすれば、アンナは精神分析、Drテンマは魔法、連邦捜査官ルンゲは腹話術、そして危機に制御不能のばかでかい何かがグリマーでなくなるまで膨れ上がって猛威を振るうグリマーの隠語は恐喝(他の誰かの舌を通した秘密の告白)なのである。この恐喝は、ヨハンの、アンナの頭を通した秘密の想起(神託)じみる。グリマーがグリマーでない誰かになるミステリは犯人を探す王が実は犯人であるようにして出没するエラーで、それはヨハンがアンナとなって出現する遡上、失踪に青い水脈が通じている。さらには、ヨハンやグリマーが遡るようにして連邦捜査官ルンゲが辿っているのはミステリではなく魔法がかった怪談であって、その隠語は膝頭にできた人面瘡の制御不能の腹話術的な自白である。遠近法が扱う事実は妄想と瓜二つなのである。
このようにして、どう隠語が変脱しても、師が弟子となって廓然大悟する如き思考の感染である。この5隠語に導かれて、5神格は次元跳躍して霊的でなくなるルーエンハイムの町に集結することになる。山々に囲まれて安らぐルーエンハイムの町に隠遁するクラウス・ポッペは誰でもない誰かではないようでいて、後れて来るはずなのに早く来過ぎた孤独は、焦燥のように躁ぐ山々に監視されている。自由剥奪の覚醒である。
さらには、グリマーがグリマーではない誰かになるミステリは、連邦捜査官ルンゲと、ヨハンの器官の延長に過ぎないかに見えるロベルトとの格闘を通して解明されるというより、ロベルトの舌を通したココアの告白がグリマーの記憶回復と交差して(「赤いバラの屋敷」の濃厚な眠気のような霧で見失うまいとしていた少年の名とココアの記憶の回復と交差して)グリマーでなくなるまで膨れ上がるグリマーと瓜二つのグリマーでない誰かが霊的でなくなる。つまり、ロベルトの嘘っぽい神出鬼没と超人振りは、グリマーが姿を現わすと同時に姿を晦ます(精神の次元跳躍の)ミステリなのである。(「nautilus79~88」)


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