碧空1836 nautilus278(左脚を右足が兼ねる症状の拡散)
1836 nautilus278(左脚を右足が兼ねる症状の拡散)
坂口にせよ祖父にせよ、その現実性は、謙作が打ち消す不真面目や下品を代表する夢のような表出で、謙作を脅かすが守護する運命の如く、しかし運命の本当の持ち主は謙作である如くして異常接近するのであるから、謙作は漠として不快なのである。
それは、左脚が麻痺すると右足が左脚を兼ねるようなもので、漠として不快なのである。
このような兼務は、謙作の夢を埋め尽くす鴛鴦のように増殖、拡散する。祖父は父を兼ね、祖父の妾だったお栄は祖母と母を兼ねるだけでなく、嫁であることさえも要求されるほどに、しかし、麻痺した(あるいは、失われた)左脚を右脚が兼ねているのは謙作の症状であるから、この拡散は謙作の症状に応答して償うようにコピーする谺である。
しかし、夢を埋め尽くすばかりに犇めいている鴛鴦の増殖振りは、雄が雌を兼ねる、あるいは雌が雄を兼ねることの失敗のようでもある。(「暗夜行路」志賀直哉)


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