碧空1935 nautilus277(怪談じみた距離、その解除)
1935 nautilus277(怪談じみた距離、その解除)
運命の感じは、恐怖の動顛に酷似している。未だ来ないものが襲うのであり、未だ来ないものを躱そうとすることは空回りであるはずなのにまるで追いつかれるというふうなのである。
東京から山陽道播磨へ距離をおいても、まるで目一杯に引き伸ばされた護謨のように一気に距離が縮んで連れ戻される。夢の棟に跨がった「七、八歳の子供の大きさで、頭だけが大きく、胴から下がつぼんだように小さくなった」淫蕩な、底知れぬ神格の跳梁が一気に変脱して、まるで狐狗狸さんにかかったように出生の秘密を不随意に白状してしまう。腹話術に屈して、外部に遊離した人面瘡が兄の長い手紙となって姿形、声帯を変え、思いがけなくも母と祖父が交わって謙作が生まれたことを制御不能に暴露してしまう、その弾みとなるような距離の伸縮なのである。
「尾の道には急行は止まらなかった」。謙作は「普通列車で姫路まで行き、其処で急行を待つことにした」。こうした、憑物が落ちたような順応は、怪談じみた距離を解除したのである。


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