Friday, June 25, 2021

碧空1939 nautilus480(応化の実験)

1939 nautilus480(応化の実験)  「山椒太夫」がウラニウムだとすれば、「澁江抽齋」以降は放射線を出し尽くして変脱した鉛である。鴎外は、キュリー夫人が闇のなかにとり残されたガラスの容器のなかのラジウムが人知れず青白い放射線を出しているのをガラス窓越しに発見したように、「山椒太夫」が青白く光り出すのに出くわす。応化の実験の覚醒である。  というのも、安寿と厨子王の流転が、選んでも選んだことにならないのに踏み出さなければ道があるかどうか分からない底なし沼のような応化の実験に吸い込まれるように脱け出せないのを、鴎外も導かれるように発見するのであって、「山椒太夫」は、選んでも選んだことにならないのに踏み出さなければ道があるかどうか分からない底なし沼を映し出す鏡であると同時に、その鏡像である半鏡像だからである。  ところで、「山椒太夫」はどうして「安寿と厨子王」ではないのか。応化の実験を表現するのは、安寿と厨子王の流転ではないのか。

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