碧騒381 しゃべり出す海、吹き替えられる素兎
381 しゃべり出す海、吹き替えられる素兎
一体、稲羽の素兎と海は、何の衝動が吹き替えられているのだろうか。
これは、スサノヲと生贄の姫と八俣大蛇に分岐した遡上の衝動が、川上へではなく海辺へ場面を転回して、オオクニヌシと素兎と八尋鰐に分岐して再発しているのである。しかし、禍、穢悪は八尋鰐ではなく素兎に転移していて、本当の持主の接近に光り出すものを内に秘めるのも八尋鰐ではなく懲らしめに赤裸にされた素兎で、しかも光り出すというよりはしゃべり出すのである。個も種も本質も頓挫して物にならない決定不能の夭いは退治によって祓われるのではなく、生贄であることの葛藤、おののきは医薬によって癒されるというようなものでもなく、吹き替えられる。そのために、素兎はしゃべり出し、隠沼の気配は悠久の(百重波しき波打ち寄せる時間の頓挫の)気配に吹き替えられるのである。
しゃべり出す海と素兎と約束のように通りかかるオオクニヌシの、あの、既視感、それは、屋根裏部屋や縁の下闇から管を通されて吹き替えられていたからである。しかも既視感そのものが既視感に包まれていて、決定不能の眠気は濃い。


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