Monday, February 01, 2016

碧空701 知らぬ間に引き立てられていく

701 知らぬ間に引きたてられていく  「まるで引きたてられていくようだ・・・騒音は耳にはいらない・・・ただ、ある独特な静寂、まぎれもなく四方八方からひたひたと寄せてきて、こちらをじっと窺い、あわよくばこちらを餌食にしてふくれあがろうとする一種の静寂、ただそれだけが聞こえている」(「断章」F.Kafka)  それは、変装しているが、海の波の揺れ動きのように「私」を脅かし、死のようにいつかやって来て世界を満たす。というより、法則的にも歴史的にも失効するこの世の終わりであり、この世の初めから隠されている。  それは、不気味であるが極端に退屈で、暗騒音と区別がつかない。この独特のノイズが眠気のように寄せて来てふくれあがろうとする大気の大あくび、「麥秋」(小津安二郎)のそちこちに潜むカメラが、日々寄せ返して砕ける凡庸な世々のいとなみが知らぬ間に引きたてられていく方角に回り込んで、こちらをじっと窺う気配である。  それは、鎌倉に打ち寄せる海や大和に鎮まる山に属するというのではなく、それらは、収穫としての悠久をこの世のものにするために潜伏するしるしである。

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