碧空855 醜い容貌のポンス、醜いソクラテス
855 醜い容貌のポンス、醜いソクラテス
醜い容貌のポンス(Balzac)の場合、むさぼるような予期がいつまでも女性にならない焦燥から、音楽に跳躍して埋め合わせ、さらには骨董古画の獰猛な蒐集に食いついて埋め合わせる。要求が厳格なドン・ファンの場合も、むさぼるようなイデーが即興的にしか(間に合わせでしか)具体にならない焦燥と狼狽から次々と女性を跳び移っていって、この「独身者」(碧空716、717、735 )の世界は奥行がないかのようにつづく。
醜いソクラテスの場合は、埋め合わせに若者を誘惑する婚姻色がしかも「見てはならない影」としてのイロニーということになる。ソクラテスを「人間喜劇」にするマニアは、イロニー(打ち消しの副作用が自らに及ぶ効果)である。そのために、醜いソクラテスの世界は奥行がないかのようにつづくのか(従って)奥行があるかのようにつづく(従って、終わっている)のか判別し難くスリップするのである。


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