碧空1480 MOON WALK398(どもるfugue)
1480 MOON WALK398(どもるfugue)
「それはアンスル・ボルンという30歳の巡回牧師で、ある日(1887年1月17日)彼は銀行から551ドルの預金をおろし、突然グリーンから失踪、2ヶ月の間行方不明であった。この間彼はA.J.Brownと名乗ってペンシルベニアのノーリスタウンで小さな雑貨店を切りまわし、仕入れ万端を立派にやっていた。しかもこうした仕事はそれまでに一度もやったことがなかった。1887年3月14日、彼は突然覚醒して家に戻ったが、その間のことは完全に忘れていた」
このfugue (夢中遊行的失踪)は、巡回牧師アンスル・ボルンが丑待ちの鏡をのぞき込んだら、ペンシルベニアのノーリスタウンに送り込まれて雑貨商A.J.Brown だった、というふうだ。それは、アンスル・ボルンがA.J.Brown の振りをするのであるが、記憶喪失していて(場所となって潜伏していて)すなわち後れて来る主体なのである。
このA.J.Brown の(喉元まで上り詰めて来ている)壁に写る影がアンスル・ボルンにならない度忘れ状態は、壁に写る影が(潜伏しないで)命令、予期、問のままに喉元まで上り詰めて来るがいつかな具体にならない焦燥であるから、金縛り状態である。それは、後れて来る主体の、その効果が吃っているようなものである。


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