碧空3275 nautilus1618(負の主題1)
3275 nautilus1618(負の主題1)
新しい誘惑の刺激に揺り起こされた古い、消し去りたい負目が背後に迫って、その、つけ回す追跡を咄嗟の変身で何度もきわどく躱すうちに、おそるおそる振り返ると、知らぬ間に膨れ上がっていたそれは鎌倉の大仏の如く圧しかかって潰しにかかる。多様な変身がきわどく躱す、この遁走のスリルの増幅は、背後の気配が鎌倉の大仏が手のひらに乗るような牛久の大仏となって立ち上がって、まるで背後に向かって突進していたかのようで、倒錯じみている。
配慮が専ら「私」に向かっていても、専ら他の誰かに向かうことが「私」に向かうことの代理をしていても、その、配慮の向かう先が失われて空っぽになった場合、その空虚を埋め合わせる負の主題が虚飾や豪奢や喝采であっても、ゴミの山や心気的念慮や罪探しであっても、それは、空虚を満たそうと埋め立てれば益々空虚を励起、増幅してしまう倒錯である。
夏草が揺れる広い空き地に自転車が止めてあるのが、バスの車窓から見える。誰かが、他の誰かの日常に駐めてあった自転車の傍らを通りかかって、黙って持ち出して乗り回した果てに、あそこへ辿り着いたのだろうが、それとも、もともと駐めてあった日常の風景も、もっと他の誰かが乗り回した末にそこへやって来て乗り捨てた履歴を秘めていたのだろうか。恐らく、そうして受け継がれさえする空虚は、どっちの性格だろうか。負の主題は、喝采だろうか、懴悔だろうか。


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