碧空844 深追いの起原
844 深追いの起原
バスの額に「鹿追」が点灯している。卒かにそれは、あの、満州に地続いている「オサルシナイ」地方のように、新たにというよりただもう膨れ上がって迫るいつの世とも知れぬ架空の土地を実在にまで圧縮して追い込む地名というだけではない。それは、北方が「ミツマタ」よりも頭上にのしかかるような「見てはならない影」に属する未知の土地で、世界は続くはずなのにそこで世界は終わっている。仮初めに世界が続くのは実は世界が終わっていることを模写するように告白していて、この「実は」が秘めている禁止は、むさぼるような予期なのになんと反対命題なのである。むさぼるような予期を仮初めに埋め合わせる、この、何か復讐的で何か奇妙な感じ、潜み返る意識の不思議が、凡そ獲得と呼ばれる運動の、その深追いの源泉である。この世のものの占める場所の「見てはならない」影は、無なのに、ところが無こそは、場所をこの世のものにする場所の場所、すなわち潜み返る種の意味なのである。無を(不完全に)発見してしまう種族は、いつの間にか深追いしていてはっと立ち竦むのだ。(碧騒306「息の詰め方」)


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