Sunday, February 24, 2019

碧空1441 MOON WALK359(耳なし芳一の平家蟹の甲羅のような人面瘡)

1441 MOON WALK359(耳なし芳一の平家蟹の甲羅のような人面瘡)  耳なし芳一の耳、あの、入れ墨のような経文で封じられていなかった精でそこだけ変に光って露出してしまい、もの凄じい力でもぎ取られてしまった耳は、しかしその後に、魂を抜かれて愚鈍にとり残された耳なし芳一のなくてもすませるような部分などというものでは決してなく、耳なし芳一が丸ごともぎ取られて闇に引きずり込まれてしまったのである。この、闇に呑み込まれとっくに葬られたはずの耳(なし芳一)こそは、耳なし芳一にできていた平家蟹の甲羅のような人面瘡である。  狐につままれたような、この、舌を兼ねる耳の紛失は、「耳なし芳一」の制御不能の腹話術が「雁の寺」(水上勉)に転生して、破戒坊主慈海の失踪、あるいは慈海の死体の紛失に変成するかに見えるが、その事件の片隅で(変に光って)南画の中の雁の観音の目が潰されていることからして、何か不均衡なものに苦悶する慈念の過剰と欠如と激情の肉体のどこかに(変に光って)浮かび上がるはずの人面瘡はしかし外在的で、それは、その後の慈念の失踪が目の喪失、すなわち無明というものを密告するように告白している。  憤る宿業とは、とっくに事件が闇に葬られていることであるが、犯人が誰であるかどころか、そもそも何事が起こったのか分からないまるでエラーのような気配である。

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